髪の構造を知る|きしみを理解するための基礎知識

髪のきしみを理解するには、まず髪そのものの構造を知る必要があります。髪の毛は大きく3層構造になっています。

この中で「きしみ」に最も直接的に関わるのがキューティクルです。キューティクルは魚のうろこのように根元から毛先に向かって重なっており、健康な状態では表面が滑らかに整っています。この整った状態のとき、髪同士の摩擦が少なく、指通りなめらかな手触りが生まれます。逆にキューティクルが開いたり、剥がれたりすると、表面が凸凹になり摩擦が増大して「きしみ」として感じられるのです。

きしみの直接原因|キューティクルはなぜ開くのか

キューティクルが開く(または損傷する)原因はいくつかあります。日常的なヘアケアの中に、気づかずきしみを引き起こしている行為が潜んでいる可能性があります。

物理的なダメージ

化学的なダメージ

これらが重なると、キューティクルが慢性的に開いた状態になり、内部のタンパク質や水分が流出して髪全体のダメージが進行します。きしみはその「SOS信号」ともいえるでしょう。

pHと髪の関係|なぜpHがきしみに影響するのか

pH(ペーハー)とは溶液の酸性・アルカリ性の度合いを示す指標で、0〜14の数値で表されます。pH7が中性、7未満が酸性、7を超えるとアルカリ性です。

健康な髪のpHは4.5〜5.5の弱酸性に保たれています。これは髪を構成するタンパク質(ケラチン)が最も安定した状態を保てる範囲であり、「等電点」と呼ばれる概念に近い領域です。等電点とは、タンパク質が電気的に中性となり、最も凝集・安定した状態になるpHのことを指します。髪のケラチンの等電点はおおむねpH3.67付近とされており、それに近い弱酸性の環境でキューティクルは閉じた状態を維持しやすくなります。

一方、pHがアルカリ性に傾くと何が起きるでしょうか。キューティクルを構成するタンパク質のペプチド結合やシスチン結合(ジスルフィド結合)がアルカリの影響を受けて膨潤・乖離しやすくなり、キューティクルが物理的に開いてしまいます。これがアルカリ性シャンプーや洗浄力の強いシャンプー使用後にきしみやすくなる根本的な理由です。

💡 ポイント:石けんシャンプーはpH9〜10程度のアルカリ性を示すものが多く、使用後にきしみを感じやすい代表例です。酸性リンス(クエン酸リンス)がきしみを和らげるのは、pHを弱酸性に戻してキューティクルを閉じさせる作用があるためです。

コンディショナー・トリートメントはどう作用するのか

コンディショナーやトリートメントがきしみを解消するメカニズムも、pHとキューティクルの関係で説明できます。

市販のコンディショナーの多くはpH3〜4程度の弱酸性〜酸性に設計されています。シャンプー後(特にアルカリ性に傾いた状態)の髪に弱酸性のコンディショナーを塗布することで、pHを髪の等電点付近に引き戻し、キューティクルを閉じる方向に導きます。これが「コンディショナーを使うと指通りがなめらかになる」理由のひとつです。

また、コンディショナーにはカチオン界面活性剤(陽イオン性の成分)が含まれています。ダメージを受けた髪の表面はマイナスに帯電しやすいため、プラスに帯電したカチオン成分が静電気的に吸着し、表面をコーティングして摩擦を軽減します。

一方、トリートメントは内部補修を主目的とするものが多く、加水分解ケラチンや加水分解シルクなどのタンパク質成分が流出した内部のすき間を埋める働きをします。ただし、コンディショナーとトリートメントは目的が異なるため、きしみの程度やダメージの種類によって使い分けることが推奨されています。

自宅でできるきしみ改善のアクション|正しいケア手順

メカニズムを理解したうえで、日常のヘアケアで実践できる改善策を具体的に示します。

シャンプー選びのポイント

洗い方の見直し

タオルドライと乾かし方

美容室でできる対処法|担当美容師への伝え方

自宅ケアで改善が限られる場合や、カラー・パーマ後のきしみが気になる場合は、美容室でのプロフェッショナルケアを検討してみてください。

担当美容師への伝え方の例

美容室では、酸熱トリートメント(低pH領域で髪のタンパク質を再結合させる処理)や、ケラチン補充系のサロントリートメントなど、ホームケアでは補えない集中補修メニューが提供されている場合があります。自分の髪の状態に合ったメニューは、担当の美容師に相談されることを強くおすすめします。

きしみが続くとどうなるのか|放置するリスク

「きしみは見た目の問題では?」と軽視される方もいますが、慢性的なきしみには注意が必要な可能性があります。

キューティクルが開いた状態が続くと、内部のコルテックスからタンパク質・水分・脂質が流出し続け、髪の強度が低下していきます。その結果、切れ毛・枝毛が増え、最終的にはカラーの色持ちが悪くなる、パーマがかかりにくい・取れやすいといった実用的な問題にも発展する可能性があります。

また、きしみによる摩擦が繰り返されることで、毛先から徐々にキューティクルが剥落し、ダメージが根元方向へと進行するリスクもあります。「少しきしむかな」という段階で早めに対処することが、長期的な髪の健康維持につながると考えられています。

よくある質問(FAQ)

Q. シャンプー後にだけ髪がきしむのはなぜですか?
A. シャンプーの洗浄成分(界面活性剤)がアルカリ性に傾くと、髪のキューティクルが開いて摩擦が増し、きしみとして感じられます。洗浄後にコンディショナーを使い、pHを弱酸性(4.5〜5.5程度)に戻すことで改善する可能性があります。弱酸性シャンプーへの切り替えも有効な手段のひとつです。
Q. カラーやパーマのあとに髪がきしみやすくなるのはなぜですか?
A. カラーやパーマの薬剤はアルカリ性のものが多く、施術中にキューティクルを強制的に開かせて薬剤を内部に浸透させる仕組みです。処理後にキューティクルが完全に閉じきらない場合や内部タンパク質が流出した場合にきしみが生じやすくなります。施術後の酸性補修トリートメントが推奨されています。
Q. コンディショナーを使ってもきしみが改善しない場合はどうすればいいですか?
A. コンディショナーは主に表面コーティングによる一時的なきしみ改善を目的としています。内部ダメージが進んでいる場合は加水分解ケラチンなどを含む補修型トリートメントが必要な可能性があります。改善が見られない場合は、担当の美容師にヘアケアメニューや使用製品の見直しを相談されることをおすすめします。
Q. 髪のpHを弱酸性に保つために自宅でできることはありますか?
A. 弱酸性シャンプー・コンディショナーを使用するのが基本です。石けんシャンプーを使う場合はクエン酸リンス(水500mlにクエン酸小さじ1程度)で酸性に戻す方法も知られています。また、熱いお湯は髪のpHを乱しやすいため、38〜40℃程度のぬるま湯でのシャンプーが推奨されています。
Q. きしみと乾燥による広がりは同じ原因ですか?
A. 関連はありますが完全に同じではありません。きしみはキューティクルの開きによる表面摩擦の増大が主原因です。広がりはそれに加えて内部の水分・脂質不足による弾力低下や、静電気による影響も大きいとされています。どちらもキューティクルのダメージが根本にある場合が多く、同時に改善を目指すケアが有効な可能性があります。