ヘアカラーの「レベル(数字)」とは何を意味するのか
ヘアカラー剤のパッケージや美容師とのカウンセリングでよく登場する「8レベル」「10レベル」といった数字は、一般的に髪の明るさ(明度)を示す指標で「レベルスケール」と呼ばれています。数字が小さいほど暗く、大きいほど明るいというのが基本的なルールです。
このレベルスケールの概念は1950〜60年代ごろに欧米の毛髪科学の分野で体系化され、日本でも美容業界の共通言語として広く普及しました。一般的には1〜20程度の数値で表されることが多く、日本人の平均的な地毛はおよそ4〜5レベル前後とされています。
ただし、ここで注意が必要なのは、このレベルスケールには業界全体で統一された公式規格が存在しないという点です。JISのような標準化団体が数値を厳密に管理しているわけではなく、各メーカーが自社の製品ラインに合わせて独自に設計しています。そのため「8レベル」という表記をしていても、メーカーAとメーカーBでは実際に発色する明るさがまったく異なる場合があるのです。
なぜメーカーによって同じ数字でも仕上がりが変わるのか|3つの主な要因
同じ「数字」なのに仕上がりが異なる背景には、主に以下の3つの技術的・設計的な要因があります。
① レベルスケールの「ゼロ点」が違う
レベルスケールの起点(最も暗い状態を何レベルとするか)はメーカーによって異なります。あるメーカーは地毛の黒髪を「1レベル」と定義し、別のメーカーは「3レベル」から始める設計にしていることがあります。この「ゼロ点のズレ」だけで、同じ数字でも実際の明るさに1〜2トーン相当の差が生じる可能性があります。
② 色素の配合設計と「アンダートーン」の違い
アンダートーンとは、カラー剤が髪のメラニン色素を分解する際に現れる、髪の下地の色みのことです。同じ明度レベルに設定されていても、ブリーチ力(脱色力)の強さや、それを補うために配合している染料の種類・量がメーカーによって異なります。あるメーカーは赤みを補正する設計、別のメーカーはアッシュ系の寒色を強く打ち出す設計にしていることがあり、明るさだけでなく「色の方向性」まで変わってしまうことがあります。
③ 酸化染料の組成とpH設計の差
ヘアカラー剤はアルカリ剤・酸化染料・過酸化水素(オキシ)が組み合わさって発色します。このアルカリ度やpH値の設計がメーカーによって異なるため、同じ数字のカラー剤でも髪への浸透力や染色の深さが変わり、結果として明度や色持ちに差が出ます。また、混合するオキシ(2剤)の濃度設計もメーカーごとに異なるため、同じ比率で混ぜても発色が変わる場合があります。
日本の主要カラーライン間でどれくらい差があるのか
具体的なブランド名は挙げられませんが、美容業界で広く知られている傾向として、以下のような差異があると言われています。
- 同じ「8レベル」でも、メーカーによって実際の明度は「7〜9レベル相当」の幅があるとされています。
- 赤みを残しやすい設計のラインと、赤みをしっかり打ち消す設計のラインでは、仕上がりの色相がまるで別物になる場合があります。
- 日本向けに販売されているカラー剤と、欧米向けに展開されているラインは、そもそも想定している「地毛の色」が異なるため、同じ番号でも日本人の髪には明度差が生じやすい傾向があります。
- 「ファッションカラー」と「グレイカラー(白髪染め)」では、同じメーカーの同じ番号でも染料の配合比が異なるため、仕上がりの色みや明度が変わります。
このような差は、プロの美容師であれば経験と知識から把握していますが、消費者の立場からは見えにくい情報です。だからこそ、後述する「正しい伝え方」が重要になります。
サロンを変えると「思っていた色と違う」が起きやすいワケ
「前のサロンで8レベルのアッシュブラウンにしてもらったので、同じようにしてください」——この伝え方だけでは、担当美容師はどのメーカーの何というラインの8レベルを使用したのかがわかりません。
美容室によって使用しているカラー剤メーカーは異なります。さらに同じサロン内でも複数のメーカーを使い分けていることは珍しくありません。前のサロンでの「8レベル」と今のサロンの「8レベル」が同じ基準とは限らないため、数字だけを引き継いでもまったく同じ仕上がりにはなりません。
また、カラー履歴(ヘアカラーの蓄積具合)によっても発色は変わります。同じカラー剤を使ったとしても、過去に何度もカラーをしている髪と、ほぼバージン(未処理)の髪では、色の入り方がまったく異なります。サロンを変えた際には、担当美容師にカラー履歴をできるだけ詳しく伝えることが、思い通りの仕上がりへの近道です。
美容室で「思い通りの色」を伝えるための具体的な方法
数字だけに頼らず、担当の美容師に意図が正確に伝わるコミュニケーション方法をご紹介します。
① 参考画像(リファレンス)を必ず用意する
言葉や数字だけで色を伝えることには限界があります。InstagramやPinterestで「なりたいイメージ」に近い写真を複数枚保存しておき、美容師に見せることが最も確実です。このとき「好きな画像」だけでなく「嫌いな仕上がり」の画像も一緒に見せると、美容師が色の方向性を絞り込みやすくなります。
② 「明るさ」「色み」「ツヤ感」を分けて伝える
「明るくしたいのか、暗くしたいのか」「赤み・オレンジみは嫌か、あっても良いか」「マットな質感か、ツヤっとした仕上がりか」——この3軸を言語化しておくと、美容師がレシピを組み立てやすくなります。
③ 前回の施術内容を可能な範囲で伝える
使ったメーカー名がわからなくても、「前回は〇〇系のサロンでやってもらいました」「仕上がりはこのくらいの明るさでした(写真)」「色持ちは3週間ほどでした」といった情報でも、美容師の判断材料になります。
④ カウンセリングで「色のゴール」を確認する
カラー施術前に、美容師から「こういう方向で進めます」という確認があるはずです。そのとき「この仕上がりのイメージで合っていますか?」と自分からも必ず確認する習慣をつけると、認識のズレを施術前に防げます。最終的には担当の美容師に相談しながら、納得いくまでカウンセリングを重ねることをおすすめします。
「数字を共通言語にしたい」方が知っておきたい補足知識
どうしても数字ベースで話したい場合、以下の補足知識を持っておくと美容師とのコミュニケーションが深まります。
| レベルの目安 | 一般的な明るさのイメージ | 注意点 |
|---|---|---|
| 4〜5レベル | 地毛に近い黒〜暗めの茶色 | メーカー差は比較的小さい |
| 6〜7レベル | 自然な茶色(ナチュラルブラウン) | 赤みの出方がメーカーによって大きく異なる |
| 8〜9レベル | 明るめの茶色〜ライトブラウン | 最もメーカー差が出やすいゾーン |
| 10〜12レベル | かなり明るいブロンド系 | ブリーチなしでの再現性がメーカー設計に依存 |
| 13レベル以上 | ハイトーン(ブリーチが必要なケースが多い) | カラー剤単体では実現が難しい場合がある |
上記の表はあくまで一般的な目安であり、メーカーや施術条件によって大きく異なる場合があります。数字はあくまで「会話のスタート地点」として捉え、最終的には担当の美容師と画像やサンプルを見ながらすり合わせることが推奨されます。
まとめ|「数字」は参考値、仕上がりはコミュニケーションで決まる
ヘアカラーの数字(レベル)は便利な共通言語ですが、業界統一の規格が存在しないため、メーカーが変われば同じ数字でも仕上がりは変わります。明るさの「ゼロ点」の違い、アンダートーンの設計差、pH・酸化染料の配合差——これらが複合的に絡み合い、「同じ8なのになぜ違う?」という疑問を生み出しています。
この問題を解決する最善の方法は、数字だけに頼らず、参考画像・カラー履歴・明るさと色みの言語化という3つのアプローチで美容師に情報を伝えることです。美容師はプロとして、その情報を元に最適なレシピを組み立ててくれます。「なぜこのカラー剤を選んだのか」「どんな仕上がりを目指しているのか」を一緒に確認しながら施術を進めることが、長期的な満足度につながります。迷ったときは、ぜひ担当の美容師に気軽に相談してみてください。