アッシュが入りにくい根本原因:メラニン色素のしくみ
髪の色を決める物質はメラニン色素と呼ばれ、大きく2種類に分けられます。
- ユーメラニン(真性メラニン):黒〜茶色の色素で、暗くて深みのある色調を作ります。
- フェオメラニン(褐色メラニン):赤〜黄色の色素で、明るくなるにつれて表面に現れやすい特性があります。
ヘアカラー剤に含まれるアルカリ剤と過酸化水素水は、このメラニン色素を脱色(ブリーチ)しながら新しい色素を定着させます。ところが、ユーメラニンよりもフェオメラニンのほうが分解されにくい性質を持っているため、明るくすると赤みや黄みが残りやすくなります。アッシュは青〜グレー系の寒色であるため、残った赤みと混ざると「思ったよりくすまない・透明感が出ない」という結果になりやすいのです。
日本人の髪はもともとフェオメラニンを多く含む傾向があり、これがアッシュを難しくする大きな要因のひとつとされています。
アッシュが入りにくい髪質の5つの特徴
以下の特徴に当てはまる方は、アッシュカラーが定着しにくい可能性があります。自分の髪質を知ることが、理想の仕上がりへの第一歩です。
1. 地毛が黒く・太い髪
地毛が黒い髪はユーメラニンとフェオメラニンの両方を大量に含んでいます。ヘアカラー剤で脱色しても両方のメラニンが一度に分解されるわけではなく、フェオメラニンが残りやすいため、アッシュを重ねても赤みが透けて見える結果になりがちです。また、髪が太いほど色素が多く、1度のカラーリングで十分に脱色しきれない可能性があります。
2. 日光や熱などで赤みが出やすい髪
カラーをしていない状態で日光に当たると赤みを帯びる方は、もともとフェオメラニンの比率が高い傾向があります。このタイプは脱色後も赤〜オレンジのベースが残りやすく、アッシュ系の青みと混ざるとくすんだ赤茶色になりやすいです。
3. カラーの退色が早く、赤みが出やすい
カラー後1〜2週間でオレンジみや赤みが出てくる方は、アッシュの色素が抜けるスピードよりもフェオメラニンが表に出るスピードのほうが速い状態です。これは髪のキューティクル(毛表皮)のダメージや、もともとのメラニン構成によるものと考えられます。
4. 硬くてコシのある髪(剛毛)
剛毛の方は一般的にキューティクルが厚く、層の枚数も多い傾向があります。キューティクルが厚いとカラー剤が内部に浸透しにくく、色の定着が弱くなりやすいです。仮に色が入っても退色が早く、アッシュの透明感が長続きしにくいケースが多く見られます。
5. カラー履歴が少ない・初めてカラーをする髪
いわゆる「バージン毛(一度もカラーをしていない髪)」は、メラニン色素が最も多く残っています。カラー履歴がある髪と比べてメラニン量が多い分、1回のカラーで理想のアッシュトーンにするのは難しい場合があります。
赤みの「強さ」を左右するメラニンの残り方
ヘアカラーの明るさは「レベル」という単位で表され、一般的に1〜20程度のスケールで管理されています(数字が大きいほど明るい)。このレベルに応じて、残るメラニン色素の色味が変わります。
| カラーレベルの目安 | 残るメラニンの色味 | アッシュへの影響 |
|---|---|---|
| 5〜7レベル(暗め) | 赤〜赤茶 | アッシュが打ち消されやすく、暗いカーキ系に |
| 8〜10レベル(中明度) | オレンジ〜赤オレンジ | やや赤みが残り、アッシュがくすみやすい |
| 11〜13レベル(明るめ) | 黄オレンジ〜黄 | アッシュが比較的きれいに発色しやすい |
| 14レベル以上(ブリーチ後) | 薄い黄〜ほぼ白 | アッシュが透明感よく発色しやすい |
この表からわかるように、アッシュが鮮やかに発色するためにはベースの明度を十分に上げることが重要です。赤みが強い髪質の方ほど、高いレベルまで明るくする必要があります。ただし、明るくするほど髪へのダメージは大きくなるため、担当の美容師と相談しながら進めることが推奨されます。
ブリーチなしでアッシュを入れるのは難しい?
結論から言うと、ブリーチなしでアッシュを入れることは可能ですが、赤みが強い髪質の方は限界があります。ブリーチなしのカラー(ワンメイクカラー)でできることと、できないことを把握しておきましょう。
ブリーチなしでできること
- 暗めのアッシュブラウンやアッシュグレーに近いくすみ感を出すこと
- 青みや紫みを配合したカラー剤で赤みを抑えること
- カラーシャンプー(紫シャンプー・シルバーシャンプー)で維持すること
ブリーチなしでは難しいこと
- 10〜13レベル以上の明るく透明感のあるアッシュ
- くすみ感が強くハッキリわかるアッシュグレー
- 長期間(1カ月以上)の発色維持
ブリーチなしでアッシュ系カラーを楽しみたい場合は、青みや緑みが強いカラー剤を使って赤みを補色でキャンセルする手法が美容師の間では一般的です。これを「補色理論を使ったカラー設計」と呼び、赤の補色である緑・青系の色素を混ぜることで赤みを中和します。ただし、技術の精度やもともとの髪質によって仕上がりに差が出るため、最終的には担当の美容師に相談してください。
アッシュを美容室で頼む際の「正しい伝え方」
アッシュカラーを希望するとき、「アッシュにしてください」と伝えるだけでは美容師に情報が不足しています。より理想に近い仕上がりを得るために、以下の点を伝えることをおすすめします。
伝えるべき情報のポイント
- 希望の明るさ:「暗めにしたい」「明るくしても構わない」など
- 赤みへの意識:「赤みが出やすいと感じている」「過去のカラーで赤みが残った」など
- 参考画像:スマートフォンで理想の仕上がり画像を見せると齟齬が減ります
- カラー履歴:「前回は◯ヶ月前にブリーチをした」「ずっとブラックのままだった」など
- ダメージへの許容度:「ダメージを最小限にしたい」「発色優先でブリーチOK」など
「赤みが出やすい髪質なので、アッシュをきれいに発色させるために何が必要か教えてもらえますか?」と聞くと、美容師が適切な施術プランを提案しやすくなります。
また、カウンセリング時に「今のベースの状態を診てから提案してほしい」と伝えることで、その日の髪のコンディションに合った施術が受けられる可能性が高まります。最終的には担当の美容師に相談してください。
アッシュカラーを長持ちさせるためのホームケア
アッシュカラーは寒色系のため、退色した際に赤みや黄みが出やすいという特性があります。入りにくい髪質の方はとくに、ホームケアの質がカラーの持ちに大きく影響します。
カラーシャンプーの活用
紫シャンプー(パープルシャンプー)やシルバーシャンプーは、アッシュ系カラーの維持に効果的とされています。洗うたびに微量の色素が補充されるため、退色による赤みや黄みの出現を遅らせる効果が期待できます。週2〜3回の使用が一般的に推奨されています。
熱ダメージを最小限に
ドライヤーやヘアアイロンの熱は、キューティクルを開かせてカラー色素を流出させやすくします。ヒートプロテクト剤(熱保護剤)を使用し、ドライヤーは髪から15〜20cm程度離して使うことが推奨されています。
紫外線対策
紫外線は色素を分解するため、アッシュカラーの大敵です。外出時はUVカット機能のあるヘアオイルやスプレーを使用すると、退色を抑えられる可能性があります。
シャワーはぬるめのお湯で
高温のお湯はキューティクルを開かせ、色素が流れ出やすくなります。38〜40℃程度のぬるめのお湯でのシャワーが、カラー維持に有効とされています。
まとめ:アッシュが入りにくいのは髪質のせい。正しく対処しよう
アッシュカラーが入りにくい原因の多くは、もともとのメラニン色素の構成(特にフェオメラニンの多さ)にあります。黒くて太い髪、地毛が赤みを帯びている髪、カラー履歴が少ない髪は特に注意が必要です。
ただし、「入りにくい=諦めるしかない」ということではありません。ブリーチの有無・補色理論を使ったカラー設計・カラーシャンプーによるホームケアを組み合わせることで、アッシュカラーを楽しめる可能性は十分あります。大切なのは自分の髪質を正しく理解し、美容師に正確な情報を伝えることです。
ぜひ次のサロン訪問では、この記事で学んだ知識を活かしてカウンセリングに臨んでみてください。最終的な施術方針については、担当の美容師にご相談いただくことを強くおすすめします。